森林と木材の話

地球温暖化と木材

地球温暖化はすでにはじまっている

「IPCC(気候変動に関する政府間パネル)第4次報告書」(2007年)によると、2100年の平均気温は温室効果ガスの排出量が最も多い場合には約4.0度上昇すると報告されており、温暖化の引き金は既に引かれてしまいました。
全世界において国や業種を問わず、温暖化防止のためのあらゆる努力をしていかなければなりません。
図表:2100年までの気温変動(観測と予測)
  (出典:全国地球温暖化防止活動推進センターwebサイト)

木材はCO2を吸収して固定する再生可能なエコマテリアル

木材が育成される森林は、その成長過程において多くの二酸化炭素を吸収し、木材となってからも炭素を固定し続けます。木材は再生可能な天然資源であり、製造エネルギーが極めて少ない建材の一つとしても知られています。このような点から、環境にやさしい材料「エコマテリアル」と呼ばれることもあります。
また、化石燃料の代替になる「バイオマスエネルギー」としても注目を集めています。

日本の木材供給〜海外依存と輸送による大量のCO2排出〜

木材自給率3割未満。
輸入の遠隔地化がすすむ日本。

日本では、近年木材の需要量が減少傾向にある一方で、国内外共に木材輸送距離は増大しています。輸入材では遠隔地である欧州からの木材がシェアを伸ばし、国内では製材工場の集約大規模化が進んでいます。

図表:日本の産地別木材供給量
  (出典:林野庁:「森林・林業白書」をもとに作成)

輸入材を運ぶにはエネルギーがいる。


輸入材は遠方から木材を運んでいるため、その輸送エネルギーも莫大になります。

欧州材に至っては、製材時に排出するCO2の実に5.4倍のCO2を輸送時に排出する計算となります。これではせっかくのエコマテリアルも意味がありません。

図表:木材の輸入過程と製造過程のCO2排出量
  (出典:ウッドマイルズ研究会作成のグラフを一部修正)

日本の森林の現状〜森林荒廃の裏での資源量の増加〜

森林率64%。緑の列島 日本。

日本は森林が国土の2/3を占める森林資源の豊かな国です。
日本の森林は、木材を生産する人工林が4割、かつては里山として利用されていた天然林(薪炭林)が4割、残りの2割が原生林です。大部分が人間との関わりの中で保たれてきた森林なのです。

しかし、外材輸入が本格化する一方で、現在日本の木材自給率は3割未満と低迷しています。

  図表:世界の森林率と木材自給率
  (出典:林野庁「木材需給表」および FAO「STATE OF THE WORLD’S FORESTS 2005」をもとに作成)

木材が利用されず、森は人知れず荒れている。

一見緑豊かな森林も一歩中に入ると、特に人工林では暗く荒れた世界が広がっています。林業の低迷により管理放棄された森林です。

間引きなどの適切な管理がされない森林の木々は、モヤシ状の過密林となり、風や雪などに耐えられない危険な山が増大しています。

適切な管理のもと、国産材を使うことで、日本の森は元気になります。

それでも増え続ける森林資源。国産材、地域材を使おう。

わが国の森林は全国各地で不健康な状態で蓄積(森林にある木材の量)が増えています。今後、世界の人口増加と環境破壊が進むにつれ、木材に限らず、食料や燃料などの取り合いが世界中で起こるとも言われています。
自国にふんだんに森林資源がありながら、何故私たちは輸入材を使い続けているのでしょうか。一刻も早く私たちの木材消費を、国産材や地域材へシフトすることが求められます。

  図表:日本の森林蓄積量の推移
  (出典:林野庁(2003)「森林資源現況調査」をもとに作成)

世界の森林減少と木材トレーサビリティ

森林減少に拍車をかける違法伐採問題


世界中で、毎年日本の国土の約1/3(1,200万ha)の面積の森林が減少しています。

世界の森林減少に拍車を掛けている違法伐採問題がありますが、ロシアやインドネシアなどから中国を経由する違法伐採木材の日本への輸入量も増加していると推測されており、世界の森林に対する私たちの責任は少なくありません。

  図表:世界の森林面積の変化(1990-2000)
  (出典:FAO「STATE OF THE WORLD’S FORESTS 2001,2005」をもとに作成)

トレーサビリティ。近くの木を使えば、顔が見える、森が守られる。


トレーサビリティとは「生産履歴の追跡」を意味します。

食品業界などではトレーサビリティ確保の重要性が認識され、すでに浸透しつつあります。木材は食品のように口に入れるものではありませんが、薬剤や虫害、違法伐採など、決して無視できるものでもありません。

輸入材のように、産地と消費地の距離が遠隔化すればするほど、このトレーサビリティの確保は難しくなります。逆に言えば、産地と消費地の距離が近ければ近いほど、生産者や生産工場の顔が見える、信頼性の高い製品の供給が容易になります。

世界の違法伐採木材の市場は、生産地の顔が見えず、様々な国々を中継するが故に、成立しているのも事実です。

また、伐採後にきちんと植林するなど、適切な森林管理のもとに生産された木材を使うことが重要であり、それを知るために、トレーサビリティは欠かせません。

地元で育てた木を、地元で使う。
木にも、人にも、地球にも、それが一番良いい。


地域材による家づくりに代表される木材の地産地消運動には、地域の伝統や文化の継承、小規模な木質資源の循環、地域の自然環境保全、地域産業の活性化など、多くの利点がありますが、大量生産による均一・低価格の物に溢れた市街地の消費者にとって、この木材の地産地消の価値を見出すためには、それなりの時間と体験が必要になります。

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